文由閣だより

2018年12月13日

@文由閣 vol.10

清凉院「樹林墓苑」グッドデザイン賞受賞にあたり

 

東長寺は、東日本大震災の発災以来、様々な形で東北の地への支援活動を継続して参りました。その一つが宮城県気仙沼市本吉町の清凉院境内に開苑しました「清凉院樹林墓苑」への支援です。この樹林墓苑が、本年のグッドデザイン賞を受賞致しました。結の会会員の方は、ご希望があればこの樹林墓苑に遺骨の一部を埋葬することが可能となっています。今後、このようなしくみを利用したいなどのご希望がある方は、ぜひお寺までご相談にいらっしゃって下さい。この度、協力いただいた清凉院住職の三浦光雄老師、デザイン設計に力を発揮して頂いた千葉大学准教授霜田亮祐氏、株式会社ヒュマスの高沖哉氏より檀信徒の皆さまへの挨拶が届いておりますので、ご紹介させて頂きます。

檀信徒会館「文由閣」館長 手島涼仁

 

受賞ご報告

 

平素より、当山への格別のご理解とご支援を賜り、誠にありがとうございます。
このたび東長寺様をはじめ千葉大学霜田亮祐准教授、株式会社ヒュマス様、有限会社仲田種苗園様、その他関係各位のご尽力によりまして清凉院樹林墓苑が「二〇一八年度グッドデザイン賞」を受賞いたしました。
今回の樹林墓苑プロジェクトは震災以降、東長寺様との深い関わり合いの中からから生まれたものである事は言うまでもなく、東長寺様を通じて多くの皆様から、物心両面にわたる温かいご支援とご協力をいただきながら、私共は七年の歳月を歩んで参りました。この間、ご縁のありがたさ、そこから生まれる人生の機微の深さに、本当に沢山の事を学ばせて頂きました。今をみれば道半ば「途上の街」ではありますが、それでも復旧した農地では各地で収穫の秋を迎えています。「浜わらす」の子どもたちが育てた新米も楽しみです。この子らにどんなふるさとを残せるかと案ずるとき、今回この地に、この様な形で復興の足がかりを頂き、私共も更なる地域活性に寄与することができると確信しております。あるとき、人が共に「心」を養うから「供養」というのだと教えていただく機会がありました。

人はひとりでは心を養う事は出来ませんが、他者との関わりによって心を養い、そこに価値観や生き様を見いだします。つまりはその人生の中で心を養いながら、養った心を死者や神仏のみならず、他者にさえも手向けつづける行為を供養と呼ぶのなら、我々はこれからも社会との関わり合いの中で、生き方そのものを「供養」と呼べる生き様を目指し精進して参ります。
最後に皆様のご健勝とご多幸を祈念してこの度のご報告と致します。

平磯山清凉院 住職 三浦 光雄

 

 清凉院「樹林墓苑」計画から現在まで

 

清凉院は気仙沼市本吉地区沿岸丘陵部の高台に位置し、本堂から参道に向けた南の方角には太平洋(小泉湾)を臨むことができます。初めて清凉院を訪問したのは二〇一四年の秋で、その眺めもさることながら参道の傍らにある樹齢数百年のイチョウや境内に植えられたモミジが見頃で印象的でした。

樹林墓苑は参道の西側、スギ植林の斜面地に造成されました。計画前のスギ林は管理の手が離れていた状況で、林床は草木が生い茂り林内へは簡単に入れませんでしたが、その草木を分け入って中へ進むとヤブツバキなどの常緑広葉樹が多く確認され、照葉樹林帯の潜在的な植生が垣間見えました。照葉樹林とは温帯に成立する常緑広葉樹林ですが、東アジアにおいてはヒマラヤ南麓から日本に至る一帯で照葉樹林帯が形成されています。照葉樹林帯の日本における北限は岩手県南部と言われており、ヤブツバキはその指標植物となります。この地に相応しい自然葬地の在り方として、地域資源である海への眺望を活かし、健全な林内環境を管理・育成することで、景観および植生の豊かな樹林そのものが墓苑となると考えました。そこで、既存のスギ林を間伐して林床を整備した上で、残ったスギの大木に埋葬地が寄り添う「森の墓苑」と、間伐により海への眺望が開かれた丘に在来植生の草花と共に埋葬される「草原の墓苑」を造成しました。造成工事に際しては、文由閣で植栽されたモミジや野の花マットの生産者でもある福島県石川町の仲田種苗園にご協力いただきました。芝生を張った草原の墓苑には、文由閣と同じ野の花マットと海浜植物ベースの植生マットを混合して使用し、四季折々の花を咲かせています。

 2016年10月の竣工・開苑から二年が経過しましたが、林内環境は良好な状態を保っています。在来種の山野草がすっかり地表面を覆い、樹木も各所から芽吹いています。一方で外来植物の侵入も確認されていますが、通常管理の一環として駆除を行っています。今後の長期的な管理計画として数年に一度「下刈り」と呼ばれる林床整備を行い、植生を維持していくものと考えています。役目を終えたスギ林はこれから徐々に照葉樹林へと成り代わっていくものと想定されますが、墓地として管理の手が加わることは、樹林更新の手助けとなります。樹林墓苑は単なる自然志向によるものではなく、自然環境のあるべき姿を回復・保全する役割を担うことができるのです。

千葉大学准教授 霜田亮祐   株式会社ヒュマス 高沖哉