文由閣だより

2018年09月11日

@文由閣 vol.9

西日本豪雨被害支援の報告

 

 西日本豪雨(気象庁発表の正式名称は、「平成三十年七月豪雨」)は、平成三十年六月下旬から七月上旬にかけて、台風七号と同時にその時に停滞していた梅雨前線により、主に西日本各地に甚大な被害をもたらしました。被害発生以来、現在(八月中旬時点)でも報道により伝えられている通り、岡山県、広島県、愛媛県の一部地域では、この酷暑の中、避難所生活を余儀なくされている被災者も多くおり、また断水が続いている地域も残っています。各レベルの行政を中心に、自衛隊、ボランティア団体、そして一般のボランティアによる支援活動が続いている状況ですが、東長寺においても支援活動を開始。七月十三日の盂蘭盆会法要において義援金の募集を実施、参列者のご厚意により多くの義援金が集まりました。この義援金の送り先を考えていた折り、愛媛県大洲市の西滝寺副住職、福村泰史師と連絡がとれ、周辺の被害状況が確認でき、西滝寺様を通して義援金を当地に送ることが決まりました。福村師は平成十九年より本年まで約十一年、東長寺にお勤めいただいた僧侶です。ご存知の方も、大勢いらっしゃるかと思います。この義援金を持参するとともに、当地の状況確認と支援を行うために、七月下旬に愛媛県に入りました。

  • 活動箇所

愛媛県大洲市、西予市、宇和島市

  • 被害状況

 今回の災害は大きく二つの被害に分かれます。一つが、河川の氾濫による浸水被害と、もう一つが斜面の崩落による土砂崩れ被害です。

 愛媛県内には、四国山地西端を源流とする肱川が南から北に流れています。肱川は過去に何度が氾濫したことがあり、近年では、一九九五年、二〇〇四年と続けて氾濫していますが、今回の氾濫は、過去の氾濫にも増して被害が拡大したようです。それは、上流部にある野村ダム、中流部にある鹿野川ダムのいずれもが、貯水量が飽和し、流入量と同量を放流した結果、肱川の各所で氾濫がおきた模様であり、特に大洲市街地では、概算で四六〇〇世帯の家屋に浸水した記録となっています。今回の放流は、いくつかの問題点が指摘されています。通常ダムの放流は、下流域に甚大な被害を防ぐため、防災無線による放流アナウンスが流されます。実際、国土交通省四国整備局は、サイレン、および放流量増加のアナウンスを流したようですが、住民の話しによると「聞こえなかった」という声が圧倒的に多かったようです。それというのも、当時は激しい雨が降り続いており、その豪雨の音でサイレンやアナウンスがかき消されていたようです。また整備局より、大洲市当該担当部署にも同様のホットラインを送ったようですが、市側は住民へのアナウンスをしなかったようです。記録的豪雨という自然災害ではあるものの、一部人災とでも言えるような事態が現地ではあったようです。視察中ある住民の方の話しによると、鹿野川ダムの安全放流量は、通常六〇〇トン/秒のようですが、アナウンスが聞こえたときは、「相当量」という表現で、「どのくらい流れてくるか分らなかった、きちんとした数量を言ってもらえると、経験的に分かったのに」と仰っていました。実際の放流量は、三六〇〇トン/秒で、通常の六倍だったようです。今後の防災無線の活用やアナウンス方法など検証すべき点は多いようです。

 斜面の崩落被害は、宇和島市に集中しています。皆さまもご存知のように、宇和島は斜面地を利用したみかん栽培がさかんな地域です。急峻な斜面地にみかんの木が植わっている姿は壮観です。この斜面地が至る所崩落していました。宇和島市吉田町は、宇和島市街地の北側に位置し、宇和海に面した地区です。この地区の西側は半島になっており、海岸線まで斜面が迫っています。その斜面が大規模、小規模に土砂崩れにあっており、一部は海まで流れ込んでいる状況でした。この地区は現在でも一部断水が続いており、飲料水は自衛隊による給水、生活用水は地区ごとに設置されている水槽よりの汲みだしに頼っている状態です。またお風呂は、吉田公民館に設置されている「自衛隊風呂」が活用されています。発災以来、一カ月が経っているにも関わらず、水が出ない状況は、被災者の心の問題に大きく関わってきます。避難所で、または各所で一番困ったこと、困っていることをヒアリングすると異口同音に「水」の問題をみなさん挙げられます。生存の、そして生理現象に必要な水の問題は災害という場面においては、一番重要であることが分りました。

  • 支援活動

 今回は短期間の活動だったため、大きな支援活動はできませんでしたが、シャンティ国際ボランティア会(以下、SVA)の活動を一部支援いたしました。西予市野村町の野村小学校に開設された避難所において、傾聴カフェを開き、被災者に冷たい飲み物、暖かい飲み物の提供と傾聴のボランティア活動を行いました。この避難所には約七十名の被災者が避難していましたが、小学校の体育館というプライバシーがない空間での避難生活は、たとえ段ボールによる仕切りがあるにせよストレスが溜まるのは当然です。被災者同士は、同じ境遇なので、愚痴も云えません。その中に、第三者であるボランティアが「話を聴く」だけでも、ちょっとしたストレスの軽減になるようです。私が行った日は、たまたま高校野球の愛媛県大会決勝があった日だったので、男性とは野球の話しで盛り上がりました。女性の方とは、佐賀の僧侶の方が持参したペーパークラフトを一緒に作って、お話しをさせていただきました。何気ない会話でも笑顔を出してもらえてよかったと思っております。 

  • 西滝寺訪問

 さて、冒頭でも触れました通り、皆さまからお預かりした義援金を西滝寺へ届けることが、目的の一つでした。二日目の夕刻、大洲市内の避難所を数か所訪れた後、大洲市の中心部より車で十五分ほどのところにある西滝寺を訪問いたしました。JR予讃線の白滝駅の目の前にある西滝寺は、少しだけ高台にあり、浸水被害は免れたものの、目の前の白滝駅までは浸水したとご住職より説明を受けました。当時のお話しを詳しくお聴きすることができ、今回の被害の大きさを再確認させていただきました。副住職の福村さんは、近隣の住宅の泥かきをはじめ、少し離れた場所にあるお寺様からの要請で、そのお寺様のお檀家さまの被害にあった家財道具の運びだしなどを精力的に行った模様です。今回持参した義援金で、少しでもお役に立てればと皆さまの思いも含めて、お渡しさせていただきました。その際、やはり「水」が一番の心配だったと、ご住職がお話しされたことは、命をつなぐ「水」、ストレスを軽減させる「水」について、真剣に考えなくてはならないと改めて胸に刻みました。

 私自身、東北大震災から始まり、熊本地震、そして今回の西日本豪雨の災害の場所に入り、それぞれの場所で少なからず災害支援を行ってまいりました。その経験からこの場を借りて、皆さまにお伝えしたいことがあります。

①災害は何時何処で起こるかは、分りません。遠い地で起こったこととはいえ、まずは関心を持って下さい。

②関心を持つと同時に、これは「私にも起こることだ」と強く認識して下さい。多くの方は、「まさか、自分の身に起こるとは」と口にされます。

③発災したら、まずは自身の命のことを考えて下さい。隣の人や自分以外の人のことではなく、まずは「自分の身」です。

④そのためにも、必要最低限の水は常日頃から確保しておいて下さい。飲料水と生活用水は分けてもいいです。

⑤自身の命が確保されたら、周りの状況を見て、困っている人がいたら助けてあげてください。

⑥発災後の対応は、行政の単位(市区町村)で大きく違います。ご自身の行政の災害対策(ハザードマップや避難所等)を確認しておいて下さい。特に市町村合併をした地区にお住いの方は、行政範囲が大きくなっており、支援に不具合が生じている場合が多くあります。

 以上簡単ではありますが、注意点などを列記しました。ご参考にしていただけたらと存じます。

 西日本豪雨災害からの復興はこれからです。被災者は九月以降、仮設住宅での生活が始まります。生活再建もこれからです。今後もぜひ関心をもって注視していただきたいと思います。

涼仁拝